
これは、「GREAT JOURNEY OF KARATE 4 (グレートジャーニーオブカラテ4)」の中にあるサブコンテンツのタイトルです。
今回は、東映ビデオの「GREAT JOURNEY OF KARATE (グレートジャーニーオブカラテ)」シリーズを全作見た感想と共に、いくつかのテーマで沖縄空手について述べてみたいと思います。
その最初が、いきなりではありますが、「GREAT JOURNEY OF KARATE 4 (グレートジャーニーオブカラテ4)」について書いてみようと思います。
DVDの具体的な内容については、著作権やネタバレもありますので、なるべく分からないようにします。
ですのでここでは、この作品を見て、私的にちょっと気になったところを取り上げて書くことにします。
目次
まずは沖縄空手の伝承について

空手を流祖や歴史的名人から習った場合、その技術をちゃんと継承したか否かが問題になります。
たぶんですが、単なる道場の練習生だと、まず真伝を教わることは無いと思われます。
中国武術界では、息子以外に継承をさせないと言われています。
息子がいない場合に限り、信頼の置ける弟子に対して秘伝を伝授します。
なぜなら、もし代表者(継承者)に息子が居た場合、少なくとも、息子が継承する場合がほぼ絶対だからです。
そうなると、息子以外に腕の立つ師範代クラスの弟子がいた場合、息子が負けてしまうかもしれないような技を、息子以外に教えるでしょうか?
中国武術とは違い、日本の武術の場合、師弟関係は絶対的なところがあります。
師範代クラスでは、そこまで行く間に師匠との信頼関係を築きますので、流派を伝承される頃には、近隣の諸派には通達も行い、皆の知るところとなり、流派を守り、背負って立つ人間へと成長出来ますし、そのようにさせます。
息子が武術的に腕が無く、いまいちだった場合でも、こういった高弟が支え、流派としては存続していきます。
それでは沖縄空手の場合はどうでしょうか。
少なくとも、息子がいるのであれば、幼少から空手を仕込み、跡継ぎにすることでしょう。
そうなると、高弟たちは、その後を守り立てるか、もしくは退会して新会派を設立することになります。
現在でも、新しく空手流派を立ち上げるときは、少なくとも五段以上取得が条件で、師匠からも認められ、さらに親しく付き合いのあるところの道場主を集め、皆の列席の中、認定式を行うのが普通だと思います。
勝手に名乗っても周りは認めませんし、そんな道場にはなかなか人は来ないでしょう。
大事なことは、誰からどこまで習ったか、ということです。
そして、「この技(型)をこう考えてこのように変えたので新流派を立ち上げた」、というようにある程度新会派設立の理由がないと、正統な沖縄空手の会派として認めてもらえないと思います。
現在、沖縄のそれぞれの流派、会派では、その二世、三世があとを継ぎ、その伝承を続けているようです。
これは、GREAT JOURNEY OF KARATE (グレートジャーニーオブカラテ)シリーズを見ても分かります。
特にシリーズ4作目には、代表的な会派の次世代を継ぐであろう息子達が出演していました。
もちろん、この東映ビデオでは紹介していない流派、会派もたくさんありますし、私も個人的に知っている会派の二代目代表もいます。
伝承という意味では、沖縄空手は今も面々と受け継がれているという事実があります。
しかし、技については、全て教わっているかどうかは、定かではありません。もし教わっていたとしても、大事な秘伝に関しては、絶対に口外しないでしょう。
沖縄空手では本当の使い方は息子以外に教えていないのではないか?

動画配信サイトなどで、空手動画は山のように存在しますが、技を解説している動画のそのほとんどが、単なる型の分解や用法についてです。
もっと根幹になる、大事な教えについては、一切秘匿していると、私は思っています。
なんでもかんでも全てを無料で動画配信サイトに掲載してしまうと、全ての技術が流出してしまい、自分たちのやっている空手の優位性が消えてしまうからです。
どんなに情報化社会が進んだとはいえ、こういった部分に関しては表に出さないのが武術界の常識といえるでしょう。
自分の息子でしたら血が繋がっているわけですし信用ができますから、流派継承はそんなに難しくはないと思われます。それはもともと信頼関係が成り立っているからです
もしそれが息子ではなく高弟だったとすれば、歴史あるその会派を継承するわけですから、責任も重大ですが、ステータスとしては相当なものがあります。損得勘定で言っても流派を引き継いで守っていく事は考えられます。特に、日本の武術では、師弟関係は絶対的でありますので、高弟が継ぐ場合もあることでしょう。
息子であっても、血のつながりの無い高弟であったとしても、継承した後の問題ということでは、自分の空手(流派の空手)が果たして通用するのかどうか、というところが一番気がかりとなります。
そういった意味でも、伝承者だけに伝える何か秘伝のようなものがあると、私は考えています。
継承者として絶対に負けない、奥の手のような技をいくつか伝授されているはずだと思います。やはりこの先生はすごいと思わせるような何かです。
もしそれを、一般的に広めてしまうと、その空手はもはや全て裸にされたようなもので、もう優位性は何もありません。
「GREAT JOURNEY OF KARATE 4 (グレートジャーニーオブカラテ4)」 を見て。

「GREAT JOURNEY OF KARATE (グレートジャーニーオブカラテ)」シリーズに必ず出てくる空手家で、剛柔流の八木明人さんがいます。
彼はお父さんの明達先生から空手を学び、現在、東京の支部道場を立ち上げ、そこで指導されています。
かなりのイケメンで、空手の映画「黒帯」でも主役を演じているほどです。
明人さんの祖父は、剛柔流開祖・宮城長順から直接指導を受けた八木明徳先生です。
2代目が明達先生、3代目が明人さんになるでしょう。
このDVDの中で、「中国武術と剛柔流」というサブコンテンツがあります。
中国武術は、沖縄の天行健中国武術館の代表宮平保先生が登場します。
八木明達、明人両先生が剛柔流の型や技を見せて、それを宮平先生が中国武術の観点から解釈する、というものです。
剛柔流は白鶴拳が源流ではないか、といわれています。
白鶴拳については、若干ではありますが、以前記事にしました。

中国武術の観点から解釈、と言っても、宮平先生は北派の武術がメインで、南派の武術は知らない、ということでした。
つまり、白鶴拳や鶴拳系統の理論と合致するかどうかは、このDVDではわかりませんでした。
それでも、それなりの用法や連環技でいろいろと解説していました。
宮平先生が教えている用法や技については、この一連のDVDシリーズやYou tubeなどで紹介されていますが、今回の解説もそのうちのどれかであって、新しいものはありませんでした。
宮平先生も、公開できる内容は限られていて、ある程度しか教えていないように見えます。
もっと知りたければ入門しろ、といった感じでしょう。
気になるところが・・・。
ここでちょっと気になる点がありました。
宮平先生のところのお弟子さんに、明人さんが技を掛けて、腕を絡めて投げようとしていたのですが、投げられませんでした。
そこで変化して、打撃による金的打ちに変更していましたが、あの投げ方ではまず無理だと感じました。
金的打ちに変更したのは良かったのですが、私のように投げ技も練習している者からすれば、掛からなかったことは明白です。
もし、あそこで紹介した技が投げ技だったなら、もっと練習しておくべきです。
空手をやっている人たちは、関節技、投げ技にとても弱い為、ちょっとした技で倒れてしまいます。
たぶんその感覚で行っていたのでしょうが、相手が宮平先生のお弟子さんであり、指導員らしいので、投げ技はもちろん、関節技も十分に慣れていることと思われます。
そういった人に、安易に投げ技を掛けるのはいかがなものか?と思いました。
やるのであれば、もっと完成度を上げたほうが良いでしょう。見る人が見れば、出来ない部分、つまりどこが弱点かがばれてしまいます。
また、このお弟子さんと、体をぶつけ合う稽古法を体験していましたが、慣れていないこともあって、完全に負けていました。
明人さんの頭が、ぶつかった衝撃でグラグラしていたので、かなりの衝撃を喰らったものと思われます。
これもやはり見る人が見れば、マイナスの印象しかありません。
沖縄空手にはない稽古方法ですが、安易に応じて撮影しないほうが良いと思いました。
また、宮平先生の連環技を見て、明達先生も明人さんも、明らかに驚いていました。
明達先生は、以前から宮平先生を知っているようですが、それでもその驚きは目に表れていました。
確かにその動きは早いですし、次々と詰め将棋のように繰り出される技は、驚きの念を隠せないと思いますが、それでも中国武術家は他にもいますので、これくらいの技でしたら見たことがあるのではないでしょうか。
もし、見たことが無かったとすれば、それはかなり勉強不足だと思います。
DVDシリーズ3でも、明人さんが、五祖拳の先生に度肝を抜かれていたようですが、私はYou tubeで以前から知っていました。
かの東恩名盛男先生も、この五祖拳は知っておられたようで、私としてもそれが当然だと思っています。
「中国武術と剛柔流」を通してみたときの印象は、沖縄剛柔流空手よりも、宮平保先生の中国武術の方がなんだか凄い、という印象でした。
編集者の偏向的な意図も感じますが、逆に言えば、もっと勉強した上で、私の剛柔流はこうなんだ!という強い意志のようなものが欲しかったです。
その気概があれば、「それ(中国武術)はそれで凄いけど、うちはシンプルでより進化した武術なんだ!」というメッセージでも送れたのではないでしょうか。
沖縄にはあって、中国には無いもの。
私も、空手は中国武術が起源であると思っています。そして、沖縄に入ってきて、その歴史の中で取捨選択され、磨かれ、今の形になっていった、と考えています。
沖縄にはあって、中国にはないもの、それは「一撃必殺」の思想です。
これは、松村宗棍が薩摩の示現流からヒントを得て、首里手に取り入れたものと考えられています。
その思想が沖縄人には合っていたのでしょうか。首里手だけでなく、ほとんど全ての沖縄唐手(空手)が取り入れ、空手の根幹を成す思想になっています。
相手の技に圧倒されたとき、それは負けです。
武術家として負けてしまえば、流派の存続の意味が無くなってしまいます。
考えても見てください。
剛柔流流祖・宮城長順先生は、中国本土でおそらく白鶴拳(か何か)を学び、沖縄に帰ってからも研究と研鑽を重ね、今の剛柔流を創り上げたのです。
中国で習った武術よりも、弱い武術をよしとするでしょうか?
おそらく、何か思うところがあり、これなら負けないというものを創り上げたのだと、私は思っています。
一撃必殺の思想が加わったとき、沖縄空手がシンギュラリティーを迎えたのではないでしょうか。
その思想から積み重ねられ、磨き上げられたとき、剛柔流はこのようになったのではないでしょうか。
武術を行うとき、思想や哲学はとても大事です。
ここが無いと、こういったときに気持ちで負けてしまいます。
一撃必殺は、沖縄空手独自で発展させてきたものです。
中国武術に劣るところは全くない、と私は断固そう思います。
もし、明人さんが全てを伝授されておらず、明達先生も隠したままであったとすれば、話は別ですが・・・。
まとめ

東映ビデオの偏向取材でしょうか?
沖縄空手がなんだか下に見られたようで、見終わった後、胸に引っかかるものがありました。
これでは、宮平保先生だけで無く、松涛館の中達也先生も、沖縄空手より上回っているように思えてなりません。
沖縄の空手家は、もっと自身を持ってやってもらいたいものです。
島津藩による支配、アメリカ占領政策など、沖縄の歴史は簡単に語れないところがありますが、(私は沖縄人ではありませんが)ウチナンチュの気概をもっと持ってもらいたい。
今やっている沖縄空手をもっと信じて、もっと技の研究をして、もっと練習してもらいたい。
そうすれば、あのような場面でも、技を掛けて極められるようになるはずです。
今後の沖縄空手に、次世代の継承者達に期待を込めて、この記事を終わりにします。
コメント
コメントありがとうございます。本業が忙しく記事を書く暇が取れなくなってしまい、そこからご無沙汰になっています。沖縄の方なのでしょうか。時間をとって再び記事を書こうかという気になりました。ありがとうございます。