空手において貫手はどのように使うのか?

空手において貫手とは 技術

 

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空手の貫手はどのように使うのでしょうか?実戦で使えるのでしょうか?試合では有効でしょうか?

また、私が知っている貫手の方法は、一般的な貫手とはちょっと違うようです。

今回は貫手についていろいろと書いてみます。

貫手とは?


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貫手は手の指を真っ直ぐ伸ばして指先で相手を突く技である。指先の鍛錬をしないものがこれを行うと指先を痛めるおそれがあるが、通常の突きやパンチよりも力を一点に集中させることが出来るため、みぞおち、脇腹、喉、目などの急所を攻撃する場合は非常に大きなダメージを与えることが出来る。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 貫手より

とあります。

まあこの通りです。

貫手の種類もそんなにありません。主なものは、

一般的に、二本貫手による目突きが紹介されていますが、目突きについて、より実戦的な使用方法は、三本指(人差し指、中指、薬指)による、掌(開手)での目突きです。これは貫手ではありませんので、ここでの説明は省きます。

私の個人的な意見としては、二本貫手は使わない(使えない)と思っています。ここでは一般的に紹介されているので、あえて取り上げてみました。

  

一般的に知られている貫手とは


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ネット検索や、書籍などでの貫手は、指先で何か硬いところを突き刺す、といったような考え方がほとんどです。

You tube動画などでは、スイカやりんごに、指を刺すものがあります。

上地流の有名な先生の動画では、板を貫手で割っています(驚!)。これは凄いですね。

また、一本指で、レンガをぐりぐりとやって穴を開けたり、畳を貫手で貫いたりと、トンでもないことをやってのける人もいます。ここまで来ると、ビックリ人間です。

「貫手」を調べていくと、このように指先をかなり鍛えて、通常では考えないような、やらないようなことをやっている場合が多いです。

実はこういった情報しか見当たりませんでした。

ほとんどの場合、鍛えた指先で、相手を貫くかのごとく貫手を使うものだといった記事ばかりです。

これでは、貫手を使えるようになるためには、かなり長い年月鍛えなければならず、貫手をやることにかなりの抵抗感を覚えてしまいます。

指先ですから弱いのは当然です。

もちろん、ある程度鍛えなければなりません。

ですが、何十年も掛ける必要はない、と私は考えますし、そのように師匠から教わりました。

これについては後述します。

 

貫手を鍛える方法は?

貫手を鍛える方法は、だいたい下記のようなものがほとんどです。

  • 指立て伏せを行う。五指→三指(親指・人差し指・中指)→二指(親指・人差し指)→ 一指(人差し指)と順次減らしていく。
  • バケツなどに入れた砂や砂利を突く。
  • 細い竹の束を作り、それを貫手で突く。

沖縄空手でも上記のような方法で貫手を鍛えています。

 

私が教わった貫手のやり方

 

私が沖縄の先生から習った空手では、貫手の使い方が多彩でした。

これは貫手なのかな?と思うような技もありましたが、指先で突くことを考えれば「貫手」なのだ、という考えでしょう。

ほんのちょっとだけ、ここに紹介します。

 

私が習った貫手の使い方

  • 耳のした辺りを狙って貫手をしたとき、下顎骨(エラあたり)に引っ掛け、抉るように突きこむ。
  • 鎖骨と上部僧帽筋の間の凹んだところに突き込む。嘴手に似るが、四本貫手の手でやっている。
  • 五十四歩の型にあるが、親指での目突き、もしくは、二~三本指(人差し指・中指・薬指)で抉るように眼に突きこむ。
  • 相手の顔面を狙って貫手を振り出すと、指先や爪が当たり、顔の皮膚が切れやすい。眼を直接狙ったり、おでこ、頬などを狙ったりする。相手にしてみれば、当たるとかなりうっとおしい。眼に当たればもちろんだが、まぶた、眼の上なども効果的。血が出ると目が開けていられなくなる。

こういった技法を教わりました。

一般的に言われている貫手のように、ただ真っ直ぐ指を伸ばして突く、といった技法ばかりではありません。

こうして書いてみると、試合では使えない、危ない技ばかりということが分かります。

ちなみに、貫手を眼に喰らったことは今まで一度もありませんが、まぶたにかすったり、おでこに喰らったりするとかなり嫌です。相手になかなか近寄れなくなります。使い方としては、まっすぐに突くことはせず、手を横にして振り出すようにします。ジークンドーのフィンガージャブに似ています。

他にもありますが、やはり危険な使い方ばかりです。

機会があればまたご紹介します。

 

私が教わった鍛え方

前述した、貫手を鍛える方法と同じです。

ですが、その頻度や負荷の強さがまったく違います。

皆さんが思っているほど、たくさんやりませんし、負荷も小さいです。

ですので、痛めることもありませんし、そんなに痛くもありません。

前述の通り、貫手を使う箇所は、目、喉、脇の下等、急所ばかりですし、身体部位としても柔らかいところばかりです。

相手の胸板や鍛えた腹筋めがけて貫手は使いません。そんな使い方をしても大した効果はないでしょう。

拳で突いたような、またはそれ以上の効果を貫手に求めて、鍛えまくるということもアリだと思いますが、私なら、それに費やす時間や労力を別の方向へ向けます。

それではその方法ですが、

主に突いたときに突き指しないような貫手の形を作ることと、実際に何かをついて、貫手で突く感覚を知っておくことが目的となります。

習った方法の中でも、私のおすすめとしては、バケツに入れた玉砂利を突くのが指先を痛めず、また突く感覚も養えるので良いかと思います。

このとき、両貫手でザクザクやると、砂利が飛び散って片づけがめんどくさくなるので、片手ずつ、1回1回刺しては、ゆっくり抜いて、を繰り返します。

また、自分の掌を突いたり、胸や腹を突いたりしてみて、貫手の形を試したり、突く感覚を養うことも出来ます。

私はそこらじゅう、貫手で突っつくことをしていた時期がありました。これなら暇なときにどこでも出来ます。

結論として、私が考える貫手とは、

急所や柔らかいところに使うのでそれほど鍛え上げる必要は無く、貫手を行うときの指の角度に気をつけて、ある程度突いたときの感覚が分かっていれば、それ以上鍛錬はいらないと思っています。

 

貫手は実戦で使えるのか?

上記の内容を考えると、実戦向きですし、むしろ実戦でしかつかえないでしょう。

貫手は試合では使えないのか?

ほとんどどこの空手団体でも、試合のルールでは反則とされています。

つまり、試合では使えません。

 

貫手の使い方の誤解が多いのか?

 

私が思うには、貫手は危険性が高いので試合からは除外され、普段練習することがないため、使い方を知ることが無いか、もしくは教わっていないのか、という印象です。

ほとんどの人が、貫手を拳と同じような使い方で想像してしまっているように思います。

つまり、貫手で板を割る、ということからも分かるように、拳で板を割ることと同じように考えてしまっている、と言うことです。

そこまでして鍛えたいのであればかまいませんが、行き着く先はこの動画のようなところでしょう。  

この人は、空手家ではなく、中国武術の人らしいですが・・。

凄いことはわかりますが、ここまで指を太くしてしまって、指が本来持つ機能としては大丈夫なのでしょうか?

指立て伏せのとき、不自然に指先の第一関節が反り返っていますが、こうなるまでやる必要性を私は感じません。

例えば、そこまでして鍛え上げた人差し指や四指ができたとして、実際の場面を想像してみてください。

あなただったら、その貫手を使って、どのように戦いますか?

もし相手がボクサーのように、パンチが速く、さらにあなたの攻撃を避ける技術も持っていたら、あなたの鍛えたその指を果たして効果的に使えるでしょうか。

結局、当たらなければ意味がないというところでは、指であろうが拳であろうが、同じだと思います。

また、実戦では、相手の攻撃を捌く技術、相手との間合いを詰める技術だけでなく、他にも必要なことがたくさんあります(心理的駆け引きとか、自分の見せ方、立ち位置、歩法など)。

せっかく名刀を持っていても(名刀かどうかも疑問ですが・・)、それを使うだけの技術がなければ、宝の持ち腐れ、素人と同じです。

貫手は、指先だからこその使い方がある、と言うのが私の考えです。

拳の鍛え方については、以前書きましたが、どんなに鍛えたとしても、人間の体は鉄のように硬くはなりません。たとえ拳で石を割れたとしても、逆に石を拳に叩きつければ、拳は破壊されます。指も同じです。

たとえどんなに鍛えようとも、南斗聖拳のシンのように、貫手で体を貫けませんし、指一本でケンシロウの体に七つの傷をつける、といったようなことは出来ません。

人間の指先でも出来る攻撃方法を考えたほうが、より有効にトレーニングできると思っています。

 

歴史的背景

沖縄の家

 

糸洲安恒は、ピンアンを作るとき、危険な技を排除し、体育教育として有効なものになるよう創作しました。

貫手もそのときに排除されたと私は思っています。

型としては初段と三段で右貫手が一回ずつ出てきますが、それだけです。

その解釈も、貫手ではなく、手を引っ張られたときの形をとっている、という詭弁のようなものも聞いたことがあります。

流派としては、上地流が貫手を多用していますが、型の中で、もともとは手刀だったところを、拳に変えた部分もあると言われています。

中国の鶴拳の影響を受けたものは、拳ではなく手刀を多用します。

拳に変わったということは、可能性として、

  • 危険性排除のため変更したか、
  • 弟子を選んで教授するために秘匿したか、
  • もともと教わっていない(伝わっていない)か、

のどれかでしょう。

空手の源流は沖縄空手ですが、そのまた源流をたどると中国武術にさかのぼります。

その後、沖縄で研究され改変していったとすれば、沖縄の県民性(沖縄人の考え方?かな)が「手刀→拳」に変えたと言わざるを得ません。

なぜなら、実戦性があるにせよ、無いにせよ、「手刀→拳」を良しとして創作され、今まで長年受け継がれてきたのですから、それを良しとしている風土がある、としか思えません。

各流派の現宗家が、今指導している型が、そのまま本物の沖縄空手であり、その教えに従って貫手を行うことが本来の使い方である、と言うことで理解するしかないでしょう。

 

まとめ

以上、空手の貫手について書いていきました。

  • 一般的に知られている貫手について紹介しました。
  • 私が習った貫手について紹介しました。
  • 私が考える貫手の使い方もあわせて書きました。
  • その流派の宗家筋から習うのが一番間違いないことを書きました。

参考までにどうぞ。