拳を鍛える、と言うことについて(拳ダコ編)

空手のトレーニング、筋トレ 技術

空手において、拳を鍛えるとはどういうことでしょうか。 なにをどのように鍛えていけばよいのでしょうか。 どこまで鍛えれば、良いのでしょうか。

初心者からベテランまで、気になる「拳を鍛える」ことについて解説していきます。

 

空手において、拳を鍛えることとは

空手 拳 鍛える

空手において、拳を鍛えることとは、どういうことでしょうか。

調べていくと、そのほとんどが「拳頭を硬くすること」についての記述です。

つまり、拳ダコを作る、ということについてです。

また、石よりも硬い拳を作る、石のように硬い拳を作る、と言って、握り方を説明しているところもあります。

他にも、拳を直接鍛える、と言うものではなく、突くときに、手首、肘、肩がしっかりと安定し、そして体重を乗せた突き方を目指すことを総称して「拳を鍛える」としているところもあります。

これは、拳だけでなく、握り方や、手首、肘の安定感の向上、突くときの腕の伸ばし方など、腕全体を鍛える要素として考えています。

つまり、拳を鍛えると言うことは、

  • 拳ダコを作る
  • 硬く握る
  • 腕全体を鍛える

以上3つがいわゆる「拳を鍛える」ことと言えそうです。

今回はそのうちの「拳ダコを作る」を解説していきます。

 

石よりも硬い拳を作る、石のように硬い拳を作る

石のように硬い拳

まずは、石よりも硬い拳を作る、石のように硬い拳を作る、についてです。

石よりも硬い拳、と言うのは、事実上不可能です。

比喩表現として、石のように硬い拳、と言っているのであればわかりますが、拳が石よりも硬くなることは、絶対にありません(サイボーグなら・・・)。

ただ、拳を硬くすることで、やはり硬いものが当たれば痛いわけですから、与えるダメージを想定して、拳を硬くする、と言っているのではないかと思っています。

また、拳を硬くすることのやり方ですが、これは拳の握り方のことを説明していることがほとんどです。つまり、拳を硬く握りこむ、と言うものです。

硬い拳を作り上げる意味は、「外力に対して、拳が変形したり、破壊されたりしないこと」ではないかと思います。

そういった拳を作ることができれば、相手を殴るとき石のように硬い拳でダメージを与えられ、こちらの拳は壊れることがない、ということになりそうだからです。

ですが、拳のどこを当てるかは、すでにはっきりと決まっています。

空手の正拳の場合、人差し指と中指の中手骨拳頭です

拳を硬く握ることよりも、中手骨拳頭が上手く目標物に当たるように練習することのほうが大切だと思います。

また、当たったときに、その衝撃に耐えられ、且つ、自分の体重を拳頭に乗せて突くことができるように、拳の形を作っていく必要があります。

つまりただ単に力一杯握ったところで意味がない、と言うことです。

空手の拳の握り方については、以前ご紹介しましたので、そちらをご参照ください。

>>空手の拳の握り方について解説します

また、中高一本拳で急所を点穴する方法や、指の第二関節で肋骨の間を狙って当てる場合もありますが、今回は空手の正拳のみに限定します。

 

拳ダコを作る

タコではなく拳ダコ

拳ダコとはいったいなんでしょうか。

拳ダコに似たものとして、ペンだこがあります。

ペンだこを調べていたら、こんなものを見つけました。

たこべんちしゅ【たこ(胼胝腫) Tylosis】

[どんな病気か]

皮膚の表面にある角質(かくしつ)が部分的に厚く、硬くなったものを、たこといいます。 足の甲(こう)にできるすわりだこは正座の習慣を長く続けた中年以上の女性によくみられます。
力をこめて字を書く人の中指や人差し指にはペンだこが、赤ちゃんの指にはときにしゃぶりだこができます。スポーツ選手の手足の指などにも、血マメをくり返しているうちに、りっぱなたこができます。
このように、物理的な刺激をしじゅう受ける部位で、皮膚を守るために角質が厚くなったものが、たこと考えてよいでしょう。
ただ、体質的にたこができやすい人もいます。お年寄りや更年期の女性、糖尿病のように血行が悪くなる病気の人などがそうで、遺伝病によってひどいたこが何か所もできる人もまれにいます。

小学館 「家庭医学館」

 

つまり、拳ダコとは、拳頭の皮膚の表面にある角質(かくしつ)が部分的に厚く、硬くなったもの、と言うことになります。

拳頭部分の皮膚はとても薄く、その下は直ぐ中手骨です。

硬いものに当てれば、皮膚がすりむけたり、切れたり、場合によっては、骨が見えてしまうこともあります。

そこで、この拳頭部分にタコを作り、厚く硬くすることで保護しよう、と言うものです。

拳頭に、常に刺激を与え続け、角質化することで、拳頭部位の皮膚を厚く硬くするのですから、これならまさに、「拳を鍛える」といった感じですね。

それではその鍛え方です。

 

拳立て伏せをおこなう

まずは、拳立て伏せです。

お金が掛からず、今すぐに出来る方法としては、最適でしょう。

拳の人差し指と中指の拳頭を床に当て、腕立て伏せを行うものです。

私は一度、ペナルティと言う意味で、アスファルトの上で、この拳立て伏せをやらされたことがありました。30回くらいですが、かなり痛かったです。ちなみにそれは、腕立て伏せ100回中、指示された時に拳立てに切り替える、というものでした。ほとんどイジメですね。今となっては懐かしい思い出です。

さて話はそれましたが、初めから床や硬いところで拳立て伏せを行うと、とても痛くて出来ません。10回も出来ないでしょう。

まずはタオルなど薄手のものを敷いて、拳頭を若干保護しつつやることをお勧めします。

また、拳の立て方ですが、縦拳で脇を締めたやり方から、正拳で脇を広げたやり方までの間で、シームレスに角度を変えて行います。こうすることで、ただ単に拳ダコを作るだけでなく、いろいろな角度で突きを打つための筋トレにもなります。

とても単純ですが、こういったトレーニングをすることで、拳の握り方もわかり、手首、肘、肩までの筋力を向上させ、突きを打つための腕を作っていく効果があります。

ちなみにこれは初心者のための練習方法です。

ある程度、突きの衝撃に耐え、さまざまな突き方が出来るようになったら、腕立て伏せは必要ありません(断言します)。

突きの威力は腕だけで出すものではなく、体全体の動きを伴って、始めて出来る身体動作だからです。

体全体の動きを伴った突きを繰り出せるようになると、かなりのスピードで拳が飛んでいきますので、それに伴って威力も出ます。それに耐えうるだけの腕や拳を作るためには、拳立て伏せのような練習も、最初のうちは必要です

その昔は私もやっていましたので、紹介しました。

 

巻藁を突く

一番のおすすめはやはり巻藁を突くことです。

巻藁突きは、拳ダコを作り、さらに突くときの手首、肘などを安定させる練習にもなります。

自作も出来ますが、最近は安価で販売されているものがあります。

空手発祥の地、沖縄では、どこの道場に行っても設置されているアイテムで、打撃系の練習には、なくてはならないものです。

突くだけでなく、手刀、裏拳、腕、肘打ち、蹴りまで対応できます。

空手に取り組む人であれば、必須と言っていいアイテムでしょう。

詳しくは、以前の記事、巻藁についてを参照ください。

>>空手の巻藁について

 

拳の骨(中手骨)まで、鍛えることが出来るのか?

拳の骨は鍛えることができる

さて、拳ダコを作ることで、拳頭を保護し、皮膚の損傷、中手骨の骨折等を防ぐ効果があることがわかりました。

それでは、突くときに重要な拳の骨、中手骨は鍛えることが出来るのでしょうか。

そもそも骨を鍛えるって、そうすればよいのでしょうか?

カルシウムを多く摂取することでしょうか。

最近の研究では、牛乳を飲むことが、カルシウムを摂取することにならないことはが知られています。

小魚を骨ごと食べるとか、栄養のあるものをちゃんと食べるとか、食生活を心がけるのは当然のこととして、空手の練習で鍛える方法はあるのでしょうか。

骨は鍛えることが出来る!

突きに使用する部位、特に拳から手首、肘、肩までにかけての筋肉と骨の強化について調べていたところ、以下の本を見つけました。

有酸素運動が一部の症状や疾患のリスクを減らすのに対し、体重負荷エクササイズとレジスタンストレーニングは骨を強化することによって、全身の骨格を修復、維持し、運動機能の低下を防ぎ、関節炎や骨粗鬆症などの疾患を予防する効果がある。

「ハーバード医学教授が教える健康の正解」 サンジブ・チョプラ 著/デビッド・フィッシャー 著/櫻井 祐子 訳 (ダイヤモンド社刊)

この本によると、どうやら筋肉をトレーニングすることは、骨密度を上げる有効な運動であるとしています。これは多くの研究で示されていることであるようです。

医療現場でも、骨粗鬆症の予防として、簡単なストレッチや適度な筋力トレーニング、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を指導しています。

また、骨に衝撃を与える運動をすると、骨が鍛えられる、と言うことで、跳躍体操(ジャンピング)をすすめているところもあります。

と言うことは、空手を練習することは、もちろん筋トレにもなりますし、その結果、骨も鍛えていることになりますね。

前述した、拳立て伏せを行ったり、巻藁突きを行ったりすることは、拳や腕の筋肉や骨に刺激を与えていることになりますので、筋肉を鍛え、骨を強化することに繋がります。

ということで、中手骨も鍛えていると言うわけです。

医学的に見ても、まさに「拳を鍛えている」ということが分かりました。

  

硬い板や壁に拳を打ち付けることは?

手の骨

硬い板や壁に拳を打ち付けて鍛える例もあります。

世界的に有名は空手家、剛柔流の東恩名盛男先生の動画を見たことがある人は多いでしょう。

自らの拳を、コンクリートの壁や自然石に打ちつけ、何十年と鍛えているその姿は、まさに鬼神のごときです。

拳を打ち付ける強さがある一定の範囲内であれば、筋肉や骨格を強化することに貢献すると考えられます。

しかし、強すぎたり、やりすぎたりすると、それは間違いなく破壊行為となります。

一度痛めた拳は、なかなか元に戻らず、その間、突きの練習ができません(経験談)。

手は、たくさんの骨と小さな筋肉の集合体です。手の機能については、ここで触れませんが、おおよそ拳で殴るように作られていないと思います。

それを、練習によって、拳を殴る武器として特化するわけですから、本来手が持っている機能まで損ねないように注意して鍛錬したいものです。

ですから、負荷を掛ければ強化できるとは言っても、行き過ぎた場合、やはり破壊行為となる危険性があるため、あまり硬いものに拳を打ちつけ鍛える、と言うことは、私個人的にはおすすめしません。

目的は、人に対しての打撃ですし、額や肘といった硬い部位を狙って突くわけではありません。

万が一、当たってしまうことがあるかもしれませんが、そこは突きの技術向上を目指して練習すればよいと思っています。

ですので、やはり前述した、拳立て伏せや巻藁突きをおすすめします。

 

まとめ

空手の記事に関するまとめ

ここでは空手においての拳の鍛え方、特に、拳ダコの作り方について書きました。

  • 拳ダコは、鍛え上げれば、拳頭を保護する
  • 拳ダコを作るには、拳立て伏せ、巻藁突きが良い
  • 衝撃を与えれば、筋肉だけでなく、骨も強化できる
  • 壁などの硬い部分に拳を打ち付けるのは、私個人としてはおすすめしません

以上です。ご参考までに。

  

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