空手の突きの練習器具として、巻藁があります。
沖縄ではどこの道場でもあり、普通に練習できるものですが、本土ではあまり見かけません。
巻藁を設置しているところは、沖縄空手を教えている道場くらいではないでしょうか。
この巻藁ですが、いつごろ作られたか、どうしてこのような形になったのかという研究はどこにも無く、その起源は全く分かっていません。
また、巻藁とサンドバッグでは、その練習効果に違いがあるのでしょうか。
この点について詳しく書いてある書籍、ネット記事等は、今のところ見当たりません。

そこで、今回は、私の経験と独自解釈で、巻藁について一考していきたいと思います。
巻藁の発祥や成立過程、巻藁の作り方、巻藁突きの方法、サンドバッグとの違いなど、私の解釈で書いていきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
空手の巻藁の作り方。

拳を鍛え、突きの練習も出来る、ということで、巻藁突きは、沖縄空手に限らず、空手に取り組む全ての人にとって、必須のトレーニング器具と言っても過言ではありません。
現在では、タイヤのチューブやサンドバッグなど、いろいろとありますので、必ずしも必要かといわれれば、そうとも言えませんが、やはり空手をやる人にとっては、 巻藁突きは、ぜひ取り組んで行きたい練習メニューの一つでしょう。
さて、巻藁ですが、いまさら解説しなくても知っていると思いますが、板に藁を荒縄で巻きつけて地面に突き立てたものです。
「本部朝基と琉球カラテ 岩井虎珀著 愛隆堂」に、「巻藁の作り方とその稽古法」と言うものが載っています。
「立巻藁は、藁で平紐を作り、わらに巻きつけ、長さ一尺幅三寸五分程の所謂『マキワラ』をこさえ、これを巻藁木にくびり付けて、突くのであるが其の大きさは、普通左の通りになっている。一:全長 七尺(地上四尺五寸地下二尺五寸) 一:幅三寸五分 一:厚さ 上端五分 下端二寸五分」
本部朝基と琉球カラテ 岩井虎珀著 愛隆堂 P.15より
通常知られている巻藁は、立巻藁というようで、それ以外にも、提巻藁というものもあり、これは30kgの砂が詰まった俵のようなものらしいです。これを吊るして突くようです。
提巻藁は、今で言うサンドバッグと同じですね。ですが、使用する人は少ない、と本にはありました。
1920年代以前の沖縄では、サンドバッグよりも立巻藁=いわゆる一般的な巻藁のほうが、練習に使われていたと言うことが、この本には書かれています。
この本は、空手の技術だけでなく、琉球の歴史、空手の歴史も詳しくかかれている、大変お勧めの本です。
空手の巻藁の作り方。
私の方法で宜しければ、空手の巻藁の作り方をご紹介しますので、ご参照ください。
用意するもの
- キックミット(安物のしょぼいヤツ)
- 1×4の板 (長さは30cmくらい)
- 荒縄
- 藁の代わりの緩衝材(ウレタンでも、古いタオルでもOK)
- 自転車のタイヤチューブ2本くらい(1本のチューブを切ってゴムチューブ2本を作ります)
作り方
通常のキックミットを用意します。なるべくしょぼい安物が良いです。
ホームセンターで、1×4の板を買ってきて、30cmくらいの長さに切り、「板-チューブ-緩衝材」の順番で重ね、チューブは縦方向に重ねます。
その板とチューブと緩衝材を、荒縄で硬くグルグルに巻きつけます。2重にしたほうが拳頭に優しいです。
この荒縄グルグル巻の板から出ている自転車のタイヤチューブで、キックミットに縦方向に取り付けます。取り付け方は、チューブを後ろで結ぶだけです。
これで出来上がり。
さらにこれを自宅の柱などに、あらたに自転車のタイヤチューブで縛り付ければ、自宅で巻藁突きが練習出来ます。
キックミットですからショックもわりと吸収され、拳頭もあまり痛くないです。
多少音は出ますので、真夜中の練習はお控えください。
私はこれを一時期使っていましたが、今は、通販で買った巻藁木を庭に設置していますので、古くなっていたこともあり解体しました。
巻藁が作られた成立過程を考察してみる

ではなぜ巻藁が、この形状、この材料になったか、というところは、いろいろと調べたのですが、どこにも言及されていませんでした。
ここからは私の想像です。
たぶん最初のうちは、生木に藁でも巻きつけて、それを突いていたかもしれません。
ある程度細い木であれば、しなりもあり、突くのにちょうど良かったかもしれません。
生えている木では、太かったり、細かったり、近くに無かったり。破損したときには、また探しに行かなければならないため、それに似た状態のものを作ろうと考えるのは自然なことだと思われます。
考えられることとしては、材料がどこでも手に入り、作るのが簡単、壊れても直ぐに新しいものが作れるなど、調達の容易さ、そして安価(もしくは無料)と言うところから、藁や木という素材になったと思われます。
そして、試行錯誤の結果、こういった形に収束したと思われます。
先ほど紹介した 「本部朝基と琉球カラテ 岩井虎珀著 愛隆堂」では、立巻藁以外にも、提巻藁があったと書いてありました。しかし提巻藁は使用する人が少なかったと書いてあります。
「本部朝基と琉球カラテ 岩井虎珀著 愛隆堂」には、
提巻藁について、提巻藁は十束位の藁の中に五十斤程(一斤=600g)の砂を入れ、長さ一尺五寸(一尺=30.3cm)の四尺廻りにして、更に縄で固く巻きつけ、それを両端より提縄を掛け、上に吊るして突くようになっている。とあります。
本部朝基と琉球カラテ 岩井虎珀著 愛隆堂 P.15より
これを見る限りですと、米俵に似た藁の入れ物に砂が入っているものだと推測されます。
提巻藁(サンドバッグのような俵)があまり普及しなかった理由に付いては、ただ単に、作るのが大変だったからかもしれません。
この提巻藁の俵の作り方は、この文章ですとはっきりと分からないのですが、参考までに、米俵の作り方でしたら、ネット検索で見ることができます。結構時間が掛かりそうな代物です。
これに比べれば、立巻藁はとても簡単に作れます。
間違った巻藁突きのやり方

どこかの道場で、巻藁が駐車場に並んでいるのを見たことがあります。
通常の巻藁もありましたが、板ではなく木の柱を使っていました。
他にもありましたが、それは足場に使う鉄管を支柱にして、そこに荒縄を巻きつけた板を貼り付けたものでした。
これは大変危険な巻藁です。全くしならない木の柱や鉄管では、拳の破壊行為です。
巻藁に使う巻藁木は、上部が薄く、地面に行くほど厚くなっています。
これは、突きを入れたときにしなるように考えられているからです。
地面部分が厚いのは、突きこんでも折れにくいからです。
自作するとき、例えばホームセンターなどで、2×4(ツーバイフォー)の板を買ってきても、材質が硬すぎて全くしならず、1×4の板だと、今度はちょっと突きこむだけで、直ぐに折れてしまいます。
では、折れてしまわないようにと思って、前述のような、柱や鉄管で行った場合、今度は硬すぎて衝撃がそのまま拳頭や、手首、肘、肩に跳ね返ってきます。
これでは、突きを学ぶ前に、自分の拳が壊れてしまいますし、自分に返ってきた反作用が、かなりのストレスとなって、さまざまな部分を損傷させてしまいかねません。
ですので、巻藁の板はしなるように作られていて、且つ、ある程度、拳頭を守るようなクッションとして、藁と荒縄の部分(革製品もある)が取り付けられているわけです。
板ではなく、鉄管で代用しても、百害あって一理なし、巻藁突きの練習は成り立たないということです。
空手の突きの練習用具

さて、現在では、巻藁はネット販売され、簡単に購入出来ます。
携帯できるような小さいものから、地面に設置する取り付け台(マキワラスタンド)も含まれた大型のものまであり、価格もさまざまです。
携帯用巻藁に関しては、こんなもの練習になるのか?と思い、買うのがもったいないので、自分で自作しました(前述参照)。
ですが、作るのは時間も掛かりますし面倒ですから、こういったものを買ってもいいかもしれません。
今現在、結構安く売られていますので、自作するより買ったほうが良いですね。
室内にも簡単に設置できるマキワラスタンドは、高価なため持っていませんが、一度、沖縄の守礼堂においてあるものを試してみたことがあります。なかなか良いもので、欲しいなあ、と思いました。
こんな感じのヤツです。↓↓
少々高価ですが、実内で練習できるところが最高ですね。
どこかの空手道場に置いてありました。
今では、自宅の庭に穴を掘り、コンクリートを流し込んで巻藁木を設置しています。雨に当たらないように自転車置き場の屋根の下に作りました。
また、サンドバッグ(砂袋)も昔自作して、今でも使っています。
これはとても簡単です。ホームセンターで砂を一袋(20kg、約300円)買ってきて、幌に使うような丈夫な布の袋(大工道具を入れる工具袋が良い)に入れて終了です。
20kgあるので、吊り下げる場所も無く、地面において殴ったり蹴ったりしています。
この砂袋を吊り下げて使うとなると、鉄管で組んだ物干し台のようなものでも作って、庭にでも置くしかありません。
ちなみにこんなのもあります。↓
実はこれ、うちの練習生が持っていました。
マンション住まいで、部屋の中においてあるそうですが、奥さんから「邪魔!」と言われているそうです。
ですが、練習には良いですよね。
家族の理解を得てから購入しましょう。
サンドバッグとの違いは?

実際に当てる感覚を養えることは、巻藁もサンドバッグも同じです。
グローブをはめず、サンドバッグを拳でそのまま突くことで、ある程度巻藁のように、突きに関する身体部位が鍛えられる可能性もあります。
しかし、練習するときの使い勝手はかなり違います。
サンドバッグでは、その周りを動き回りながら、突いたり蹴ったり、肘打ち、膝蹴りをしたりと、足捌きを使いながら、かなり自由な練習ができますが、巻藁では、突く面が決まっていますから、あまり動き回りながら練習すると言うことはしません。
やったとしても、多少の歩の移動からの突きや肘打ち、蹴りくらいです。サンドバッグのような自由度はありません。
ほとんどの場合、姿勢を一定に保って、同じ場所から繰り返すだけです。また、打つ面の高さも一定です。さまざまな高さを打ちわける練習は出来ません。
このように考えると、巻藁を使った練習は、かなり限定的なものとならざるを得ません。
ですが、そこがまたメリットとも言えます。
これは私の場合ですが・・・、
サンドバッグでの打ち込み練習では、アドレナリンが出ているように思います。
どちらかと言うと、ハードに動きまわり、力いっぱい打ち込むように行ってしまいます。
ですから、あまり長くサンドバッグを打ち続けられません。結構早く疲労してしまいます。
その点、巻藁の場合、落ち着いて突きの練習をしているように思います。
同じ姿勢で、同じ突き方を結構長く続けられます。
サンドバッグではそういった突き方の練習はやりません。
巻藁だと、なぜか飽きることなく、落ちついていろいろと考えながら、例えば前屈立ちで右正拳突きだけを延々と繰り返せるのです。
拳を当てた感覚、突きこんだときの感覚、立ち方、姿勢、拳の軌道、力加減など、いろいろ考えながらやっていると、時間が経つのも忘れてしまいます。
これについては個人差があるかもしれません。
上記は、あくまで私の場合ですが、私の周りでは、同じような意見を持っている人が多いようです。
もし、巻藁突きの練習に、鎮静効果があるとすれば、その動作を繰り返し行うことで、実戦の中でも落ち着いた精神状態が発揮出来るように、養成しているのかも知れません。
ちょっと話が飛躍していますが、これが巻藁の最大の効果であり、魅力かもしれないと、私は考えています。
まとめ

以上、空手の巻藁について書いてみました。
- 空手の巻藁の作り方のほか、私の簡単巻藁作りも紹介しました。
- 巻藁が作られた成立過程を、私なりに考察してみました。
- 間違った巻藁突きのやり方を紹介しました。
- 空手の練習用具をいくつか紹介しました。
- 巻藁とサンドバッグでは、何がどう違うのか、その効果についても書いてみました。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。