
空手の「拳の握り方」はどのようにすればよいのか?
これは空手の取り組む多くの人が日々考えている、大きな命題の一つだと思います。
この記事では、拳はどのように握れば良いかを、詳しく解説していきます。
私は町道場の師範。
私、拳シローは空手を約25年間稽古してきました。現在は、町道場で師範をしています。指導者としての経験も踏まえてアドバイスが出来ると思います。今までさまざまな拳の握り方を試してきましたが、型の表演と試合では、握り方を変えることにしています。型では見栄え重視で、「強く握りこむ系」。試合となると、突きやすいか、威力があるかなどを重視して「強く握りこまない系」にしています。
なお、記事の内容としては、伝統派空手(松涛館系)より、フルコンタクト系や沖縄空手、他流試合(直接打撃系)の空手をやっている人たち向けです。
目次
1:一般的に知られている「拳の握り方」はこれ

「強く握りこむ系」の拳の握り方
空手の拳の握り方は、正拳だけでなく、それを縦にした縦拳、裏拳、人差し指の第2関節、もしくは中指の第2関節を突き出した一本拳などがありますが、
今回の記事では、いわゆる正拳についてのみ、解説します。
ほぼ、「指をたたんで強く握りこむ系」が多いです。
逆に、これ以外のものを見つけるほうが難しいと思います。
そのやり方も、以下の3つが大半だと思います。
- 小指から順番に指を折り曲げ、指の根元にしっかりとくっつけ、最後に親指でしっかりと締める
- 人差し指から順番に指を折り曲げ、指の根元にしっかりとくっつけ、最後に親指でしっかりと締める。
- 人差し指から小指までの4指をしっかりと指の根元まで折り曲げ、最後に親指でしっかりと締める。
以上の3つがほとんどだと思います。
指を折る順番の違いくらいで、どれもみんな指の根元まで折り曲げてから、親指を人差し指、中指の第二中節骨において、力強く締め上げるものです。
ではこの「指をたたんで強く握りこむ系」の拳の握り方には、どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
握りこむ系のメリット、デメリット
○メリット
強く握っている為、指が引っかかったり、折れたりする心配が少ない。
人差し指、中指の拳頭を目標物に当てますが、このとき上手くそこに当たらず、別の部位があたったとしても、痛める心配が少ない。
上記のような心配をあまりせず、腕の力を存分に使って、思いっきり殴ることが出来る。
型演武のときは、拳がしっかりと握られているほうが力強く、見栄えがよいことは事実。
×デメリット
しっかり握っているからと言っても、やはり当たり所が悪いと、指を痛めたり、骨折したりする可能性は、無いとは言い切れません。
例えば私の場合、拳が相手の肘に当たってしまい、骨折とまでは行きませんでしたが、薬指中節骨を痛め、しばらく練習をしなかったことがありました。
筋肉の構造上、指を曲げる動作は全て、屈筋によるものです。
突きは当然、腕を前に伸ばす動作です。
屈筋を働かせながら、腕を前に伸ばす動作は矛盾しますので、
拳を力強く握りこむと腕を前に伸ばしづらくなります。
腕が前に伸びないのですから、多少なりとも自分のリーチが短くなります。
また、前に突き出したいのに、しっかり握りこむことによってブレーキを掛けているようなものですから、威力が多少なりとも減少します。
この拳の握り方の一番の問題点は、親指をしっかりと力強く握りこんでしまう点です。
しっかりと握りこまないといけない、ということが、逆に問題点となってしまっています。
親指を握りこむと、実は足の親指にも力が入ってしまいます。そんなことは無いと思われるでしょうが、手と足の指は、連動して動いてしまう性質があります。やってみると分かるのですが、足の親指を曲げたり、両脚の拇指球にグッと体重を乗せたりすると、脚全体が動きづらくなる感覚が出てきます。そして非常に不安定な立ち方になっています。この状態ですと、背筋や腰、肩、首にもストレスがかかり、体全体の動きが阻害されるのが分かると思います。
つまり、力を入れて拳を握りこむことで、体が動けなくなるにも係らず、無理やり動かすのですから、かなりのストレスを受けることになり、やればやるほど身体を壊すことになるのではないでしょうか。
2:「強く握りこまない系」の拳の握り方

私が沖縄で習った拳の握り方はこれ
人差し指から順番に握っていきますが、ほぼ同時に近いです。そして強く握りこみません。
写真で見ても分かるとおり、指と掌の間に隙間があります。
当てる瞬間に握りこむこともしません。このままです。
人差し指、中指の拳頭を目標物にしっかりと当てるようにします。そのため、それを意識した「拳立て」や「巻藁突き」を行います。
なぜなら、人差し指、中指拳頭を当てることで、指を痛めず、しかも威力のある突きを実現する為です。
重要なのは、この拳の「形」を作ることであって、力いっぱい握りこむことではないと思います。
拳の形も「型」の一つだという認識です。型ですから、しっかりと型をとるように練習します。
私の場合、拳の形がある程度きまってくるまで、初心者から始めて3年くらいかかったかな?と思います。まあ、あまり気にせず、毎日練習していれば、自然に身に付くレベルだと思います。
この拳の握り方でのメリット、デメリット
○メリット
拳を力強く握りこんでいないため、腕が伸ばしやすく、突きやすいです(もちろん、練習は必須です)。
肩、腕に不要な力が掛からず、腕が前に伸びやすいと思います。
不要な力が入っていないため、身体も動かしやすく感じます。
これは試してみれば分かることです。
是非やってみてください。
×デメリット
この拳の握り方だと、小指側の握り方が甘くなり、型稽古のときによく注意されます。
正しい拳の握り方を簡単に作る方法があります。それは、縦拳で突いて、自然に出来る拳の形のまま、横拳にすることです。
また、常に、拳立て、巻藁突きをして、人差し指、中指の拳頭に当てるように練習する必要があります。
これは、力を入れて拳を握っていない為、当て方が悪いと、小指側の突き指、骨折等、痛めることがあります。
つまり、空手の正拳は、自然に出来るものではないということですね。練習の賜物です。
ですから、沖縄では、何十年と空手をやっている先生でも、巻藁突きを練習しているのですね。
ここだけのコネタ
さて、ここまでは知っている人もある程度はいらっしゃると思います。
ここからは、私独自のネタです(技とは言わず、あえてコネタといいましょう)。
これは、組手や、他流試合のときに使う、私独自の拳の握り方です。
通常私は、「握りこまない系」の拳の握り方で教えていますので、組手ではこの握り方になります。
型の表演では、あえてしっかりと握りこんで、見栄え良くしています(練習すれば使い分けが出来るようになります)。
それでは、実際に使うときですが、実はもっと握りこんでいません。
指先が掌についていないのですから、全く握っていないと言っていいでしょう。
そしてさらに、拳を横にする「正拳」ではなく、小指側がちょっと上を向くくらいまでまわして突き込みます。
このとき、肩が上がりがちになりますが、肩を上げないようにします。
これらを行うことで、正拳突きよりも、少しリーチが伸びます。
そして何より、スピードと威力が格段に上がります。
突いた手を引くときは、腰に引くのではなく、肩前くらいに引いてきます。
こうすると、顔面やわき腹の防御が直ぐに出来ますし、連打するときにもかなりの速さで突けます。
文章だけ読むと、まるでボクシングのように思えますね。
空手の試合と言うことであれば、突きこんだとき、下半身を前屈立ちにするので、見た目は空手っぽくなります。
他流試合では、見た目はほとんどボクシングのようになります。
こんなやり方をする人は、今まで私以外で見たことありません(海外にはいるかな・・?)。
ちなみにこのやり方で負けたことはありませんので、今のところ無敵です(勝てる相手としかやっていない、と言うこともありますが・・・はは)。
たぶん、ネットサーフィンで探したとしても、空手でこれを行っている人は見当たらないと思います(たぶん・・)。
まとめ
空手の突きに特化して書いてみました。
これがボクシングとなると、全く違ってきます。
私はボクシングも習いましたが(現在もたまに練習しています)、全く違います。
突きに特化し、蹴りや投げ技が無いからでしょうか。
パンチを打つフォームも違いますので、空手のような形にはなりません。
私は空手の型が好きなので、空手は空手として習い、身につけています。
どちらにせよ、拳の握り方は、自然発生的に出来るものではなく、練習の賜物だと言うことですね。
初心者の方は、まずは3年しっかりと取り組んでみましょう。
以上です。